FERRY's game blog

ドミニオンとか アグリコラとか

領主様はアホでございますか? この執事(3コスト)めにお任せくださいませ。(1/29追記あり)

みなさん、こんばんわ、FERRYです。

この検証シリーズも、いよいよ新たなフェイズに入ります。そう、廃棄の導入です。

基本に初めて触り始めたころ、礼拝堂の凄さに感動しつつも、「いやー、圧縮し終わった後、このカード邪魔だよなー」と思ったりしたもんですが、陰謀拡張には、廃棄のみならず、ドローもコインも出せる、執事さんがおられました。仮面、道具と並んで、3コスステロ三銃士(コンボでも強いよ!)に称えられる執事の実力を検証してみましょう。

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執事は①2枚廃棄、②+2枚ドロー、③+2金のうちからひとつを選ぶという効果を持っています。②と③に関しては、これまでにも検証を進めてきました。

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常に③の効果で使った場合は属州4枚獲得まで約16.6T、常に②の効果で使った場合は属州4枚獲得まで約16.1Tと、鍛冶屋銀からの鍛冶屋ステロ(属州4枚獲得まで14.9T)に大きく劣ります。序盤に金量を増やして、1ドローあたりの金量期待値が上がった状態で3ドローできる鍛冶屋との差は明確です。
執事の廃棄効果の検証に移る前に、この②と③の効果を適切に組み合わせることができれば②単体、③単体に比べて、どの程度速度向上できるでしょうか?
ここでは、「手札6金でデッキに金貨1枚以上あれば③+2金選択、手札4金で金貨0枚であれば③+2金選択、それ以外は②+2ドロー」というアルゴリズムを組んで、金貨獲得の確実性を確保しつつ、属州を獲得するアプローチを考えてみます。

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あ、あれ?平均値=16.0T、中心値=16T、最大値=23T、最速値=11T、3σ=5.3と、2ドローより少しマシ、というレベルの改善しか認められません、、、。
ターン毎の平均金量の推移を見ても、鍛冶屋ステロ、執事ステロは、アクションカード自身の金量を含んでいないのでお金プレイよりも低い推移ですが、鍛冶屋ステロの1.5倍に該当するような平均金量ではないため、鍛冶屋を打った時の追加金量期待値と、執事を②+2ドローで使った場合の追加金量期待値では、比べるべくもありません。途中からデッキ1枚あたりの平均金量では鍛冶屋ステロを上回りますが、これは、鍛冶屋ステロが勝利点を買い始めるタイミングが執事ステロに比べて速いためで、執事ステロ側が有利になっているわけではありません。

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ここまでの検証で、執事はドローとコインの効果だけを使っていても、強くない(対鍛冶屋ステロ比)ということがわかります。では、いよいよ廃棄の検証に移りましょう。


まずは、細かいアルゴリズムの最適化を行う前に、先ほどのアルゴリズムを使って、「執事銀で入って、運よく3Tに執事銀銅+2枚を引けました。廃棄できた2枚によって、どの程度その後の速度に影響がでるでしょうか?」という検証を行ってみます。
執事は廃棄を行ったターンに2金しか出ないことが多く、優秀な2コストのカードの有無、もしくは、廃棄のターンで3金出せるか?によって、その後の展開が大きく変わります。2コストのカードの有無は一旦おいておいて、3Tに2枚廃棄を行って、銀貨が買えるケースは最も優秀なケースです。その上で、廃棄の内容が与える影響を可視化するのが狙いです。4T以降は前回のアルゴリズムと同じく、②+2ドローと③+2金のみを行います。

3T廃棄が屋屋の場合;属州4枚まで、平均値=13.5T、中心値=13T、最大値=19T、最速値=10T、3σ=3.9
3T廃棄が銅屋の場合;属州4枚まで、平均値=14.5T、中心値=14T、最大値=21T、最速値=10T、3σ=4.3
3T廃棄が銅銅の場合;属州4枚まで、平均値=15.7T、中心値=16T、最大値=22T、最速値=11T、3σ=4.7

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属州4枚の速度で比較すると、廃棄の内容による格差が非常に大きいことがわかります。屋屋を廃棄できた場合と、銅銅を廃棄する場合で平均速度は約2.2T異なり、分散も3σで3.9⇔4.7と、その後の引きのバラツキにも大きな影響を与えることがわかります。
鍛冶屋1枚での鍛冶屋ステロの属州4枚平均値が14.9Tですから、3Tに屋敷と銅貨を廃棄出来て、加えて、銀貨を買えて、やっと鍛冶屋ステロとどっこいどっこい。その上で、屋敷の廃棄分で勝利点数では負けることになるので、公領を買って勝利点で逆転する1手分を加えると、屋屋を廃棄できた場合でも、13.5T+1Tで、勝利点レースでは、鍛冶屋ステロと同等の速度を示すにとどまります。
もう一点注目すべきは、銅銅を廃棄したケースでも、廃棄なしでドローとコインのみで進めた場合よりも属州4枚までの速度が速いことです。

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デッキの平均金量の観点から、その差を見てみると、屋屋廃棄と銅銅廃棄でデッキ1枚当たりの金量に0.2も差がついていることがわかります(紫とオレンジの線の比較)。また廃棄無しのケースと、銅銅を廃棄したケースを比較(緑とオレンジの線の比較)してみると、一瞬金量は下がりますが、デッキ枚数が少なくなった分、6T目にはデッキ1枚あたりの金量が同等になっていることがわかります。


<1/29続き>

ここからは、廃棄のアルゴリズムを組んで、属州4枚への到達速度にどのような違いがでるかみてみましょう。

便宜上、各アルゴリズムに、以下の様に番号を割り振ります。Type2は上で使っていたドローとコインのみの判断をさせるアルゴリズムです。

Type2:ドローとコインの判断:
    手札6金でデッキに金貨1枚以上あれば+2金選択、手札4金で金貨0枚であれば+2金選択
    それ以外は+2ドロー
Type3:圧縮その1:
    手札に屋敷1枚以上、銅貨1枚以上あれば屋敷を優先して破棄する(銅貨2枚屋敷0は破棄しない)
    それ以外は+2ドロー
Type4:圧縮その2:
    手札に屋敷と銅貨が合計2枚以上あれば屋敷を優先して破棄する(銅貨2枚屋敷0も破棄する)
    それ以外は+2ドロー
Type5:圧縮その3:
    Type2の判定後、Type4の判定を行う。
    執銀銅銅屋の場合、2金での金貨購入を優先する。執事金金屋銅の場合、2金での属州購入を優先する。
Type6:圧縮その4:
    Type3の判定後、Type2の判定を行う。
    屋敷が破棄出来る時は破棄優先。(銅貨2枚屋敷0は破棄しない)

いきなり読者おいてけぼりですね。はい。少し解説を加えると、Type3は屋敷3枚廃棄してしまえば、銅貨廃棄しきらなくてもいいんじゃね?という考えです。3Tで屋屋を廃棄できたケースが強いことからもわかる通り、ドロー系ステロの常として、ドロー1枚に対する期待値金量が十分に上がれば、初期デッキの廃棄にこだわらなくてもよいのではないかと思われます。次に、Type4は、Type3のカウンター的な実験として、”初期デッキ廃棄すべし”なアルゴリズムです。手数の面から廃棄にこだわりすぎると、必ずしもデッキが成長していきませんし、どこかで金貨を入れて、金量の偏りを作りたいBigMoney戦術では、悪手ではないかと、、、。ということで、Type4は遅くなると予想。
Type5はType4に金貨を重視するステップを入れて、上に伸ばしていくイメージです。金貨に手が届かない場合は、圧縮を優先します。Type6は、ほとんどType3と同じですが、デッキの平均金量が上がり過ぎて、+2ドローした場合に過剰に金量が出過ぎてしまうようなケースを回避するアルゴリズムです。手札に6金+執事があって、残りの山札が金貨金貨であることがわかっている場合に、+2金を選択するイメージです。

さて、設定がガバガバ過ぎて、これじゃ参考にならん!とお怒りの向きもあるかと思いますが、まずはこの条件で、属州屋敷場、試行10000回、初手ランダムで回してみました。

Type3;属州4枚まで、平均値=14.5T、3σ=5.0
Type4;属州4枚まで、平均値=14.4T、3σ=4.3
Type5;属州4枚まで、平均値=14.6T、3σ=4.9
Type6;属州4枚まで、平均値=14.4T、3σ=4.7

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あれ?事前の予想では、屋敷の圧縮を優先して、なおかつ、金量の無駄を省くType6か、確定で金貨を買えるチャンスが有るときは金貨を買って、それ以外は圧縮を優先するType5が一番良い結果になるかな?と思っていたのですが、とにかく圧縮優先のType4が属州4枚の平均値が速く、かつ、バラツキも小さいという結果になりました。実際にグラフを見ると、Type4(緑の線)の遅い側の分布が他のアルゴリズムよりも狭く、結果として分布が立っています。10000回の試行なので、多少ノイズが乗る余地があるといえばあるのですが、それでもバラツキ(3σ)の圧倒的な差は、圧縮優先でデッキの質を上げていくことが確実性を上げていく(運ゲー度を減らしていく)ことにつながるという示唆に富んだ結果となりました。
一方、平均速度の観点で言えば、どんな考え方で圧縮しても、金貨を優先しても、圧縮を優先しても、平均的には14.4~14.6Tという結果で、前半の屋屋と銅銅の廃棄の差で2T速度が変わるという結果に対しては微々たる差でした。いろいろ考えるより、廃棄の巡り合わせで速度が決定してしまうという、"うーん、わかっちゃいるけど、なんとなく納得いかない~”という結果ですね、、、。
対鍛冶屋ステロで考えると、いずれも公領を追加する1ターンを加えると15.5T程度の速度であり、微不利は否めない感じです。


ところで、ここまで検証を進めてきた執事ステロは、全て執事1枚購入でのデータでした。「執事ステロを執事1枚で回すなんて素人かよ!?」とのツッコミが予想されますので、ここからは、執事2枚でのケースを確認していきましょう。執事執事の利点は言うまでもなく、3&4Tでの執事底沈み率の大幅な改善と、上手く3&4Tの手札に分かれてきてくれた時の爆発的な圧縮速度です。2ドロー、2金、2枚廃棄を選べるのですが、明らかに2枚廃棄強いですよね?冒険拡張の魔除けなんかも、「1金、銀貨、1枚廃棄」の選択で、廃棄強いなーと思ってしまいます。これまでの執事1枚での試行からどの程度速度があがるのか、データは以下の通りです。

※この執事2枚の検証に関しては、初手4-3からの執事執事限定で、属州屋敷場、2000回の試行の結果です。

Type2執事2枚;属州4枚まで、平均値=16.2T、3σ=5.4
Type3執事2枚;属州4枚まで、平均値=14.5T、3σ=4.6
Type4執事2枚;属州4枚まで、平均値=14.7T、3σ=3.4
Type5執事2枚;属州4枚まで、平均値=14.1T、3σ=4.2
Type6執事2枚;属州4枚まで、平均値=13.9T、3σ=4.6

執事1枚での傾向と比べると、執事2枚入れた場合に、速さの傾向がかなり変わってきていることがわかります。
最も速いのは屋敷の圧縮を優先しつつ、金量が足りているときはドローせずに+2金を選ぶType6でした。平均13.9Tは、3Tで屋屋を廃棄して、銀貨も買えるケースの13.5Tに迫るスピードです。金量の阻害要因となる屋敷の廃棄を執事2枚で素早く済ませた後は、金量を上げていき、銅貨が適度に混じっていることで過剰金量を出すのを回避しつつ、しっかり属州を買っていけているのだと考えられます。
一方、執事1枚で良い結果だった屋敷銅貨を全部廃棄するアプローチのType4は執事1枚のケースより遅い14.7Tという結果となりました。ターン毎の行動を追跡してみると、執事1枚の時は廃棄していないターンで銀貨を購入して金量を同時に上げていけていたものが、執事2枚での圧縮が速く進み過ぎてしまい、金量が大きく落ち込んだ状態になってしまうケースが多いことがわかりました。同時に、一旦邪魔なカードの廃棄を完全に終わらせていることから、速度のバラツキ(3σ)は最も小さく3.4となっています。速度カーブは以下の通り。

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すでに、さまざまなところに書かれていることですが、圧縮の効果は強いカードをたくさん使う。デッキ周回ごとのバラツキを小さくし、より均質な効果を得ることができるというものです。今回はステロでの試行ですが、この効果の本質については、ステロでもコンボでも変わらないと考えられます。また、廃棄効果をもつカードをステロで運用する場合、廃棄を進め過ぎるとかえって遅くなってしまう、という現象も確認できました。海外ではBigMoneyと呼ばれている通り、金量を向上させていくことがデッキパワーにつながるわけで、廃棄と金量向上を同時に行える、仮面舞踏会やよろずやの強さを裏付けさせる結果となりました。執事ステロの場合は、特に序盤で廃棄のターンに、廃棄しかできないことが多いため、上手く廃棄ターンを活用できるランドマークであったり、2金のカードであったり、との組み合わせで強さ自身が変わってきます。


さて、ここまでで、ほぼ執事ステロに関する考察は終わりなのですが、3Tに執事銅銅銅銅の手札を引いてしまった場合の動きのケーススタディが残っていました。ここまでの検証の結果からは、銅銅の廃棄は弱いので、執事を+2金で使って、金貨を買うのが強そうです。このあたりの検証について、もう少し深堀してみたいと思います。

執事の詳細アルゴリズムの次は、基本カードにして、4枚の廃棄を可能にするあのカードについても、検証の予定です。